はじめに


松樹設計企社㈱会社概要

は じ め に


松樹設計企社㈱代表/松樹新平 松樹新平を建築家として認識していると、それは彼の一部しか理解していないことになる。 興味を抱いたことには手を染めずにはいられない彼の性格は手がけた仕事の全てに責任を全うしようとし、周辺分野にまで守備範囲を広げてしまう。商工業デザインに、セールス・プロモーション、イベント・プロデュース、さらには経営コンサルタント的な分野まで。 彼はそれを決して領域外とは思っていない。とりわけ、『都市計画及び都市環境』に関しては注力を注いでいる。都市の中での位置づけなしに建築物の設計はできない。その中に何を入れ、どう運営するかを無視しては、人を感動させるデザインは生まれないからだ。

クールベに魅せられた5歳の頃から、彼と芸術とのかかわりは始まった。古い油絵の具を使い、ベニヤ板に手の指で描いたその瞬間から、その色が自然の有機物からどのような過程で造られたのかを考え続けている。日本人の得意な明度の美しい組み合わせは言うまでもなく、さらに東洋人には難しいとされる彩度の研究を繰り返した。油絵、墨絵だけではない。パステルおよびクレパス画においても、従来の用法の域を越えるものを発見し、日本には見られない色の組み合わせとともに、彼の強烈な個性としてしまった。

大学の建築科を卒業後、カリフォルニア大学の環境学科に修士入学し、同時にカリフォルニア・アート&クラフト大学の大学院にも学び帰国した彼は、独立を選んだ。自分のアイデアを生かすには、組織に埋没している訳にはいかないと考えての決断だった。

建築においては、ハウジング会社のコンサルタントを皮切りに、数千店舗のスーパーマーケット・コーポラティブチェーンの販売促進と店舗開発の顧問を勤めた。ダンヒルが日本進出して間もない時代、極東における総監修を引き受け、国別の世界ナンバーワンに導いた功績も持つ。ファッションショーにおけるプロデュース活動では、色彩と人の重なりの美しさ、照明の使い方で見る人々を魅了した。食に関しても、紀伊国屋スーパーマーケットからCGCグループの全体計画を行ったり、日本酒の販売促進を引き受け、若者に支持されるスタイルに作り変えて好評を得ている(久保田酒造)。これらの経験から培われた色彩感覚、照明に関するこだわり等は、現在の松樹新平のデザインするカフェやレストラン等の店舗設計の基盤となっている。

見慣れたもの、あるいは既に結論を出したことについて、視点を変えて見直してみることが必要だ、と彼は言う。特に高さを変えてみるのが効果的なのだ、と。光の当て方で物の形が違って見えるように、視点を変えることで凡庸なプランも意外な展開を見せる。常識だけで物事を考えていては、飛躍は望めない。『バーズアイズビュー(鳥の眼)』になって、物事を客観的にシビアに捉える。また物事を時間軸の中で捉え、過去から現在へ、そして未来へと続く時間の中で流れ動いているものとして『現在』を考えてみることこそ、必要だと説く。今日も松樹新平は大胆に、そして細心の注意を払って、新しい挑戦を続けている。